明日へと時は続く
- SAPO(部門責任者)

- 2 時間前
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何も始まらぬ
最近どうも疲労が取れぬ。何故であろうか。それは私生活に根本的な問題を抱えるが故だ。食事は一日一食、睡眠時間は十時間を超えるというのに、活動時間は昼過ぎの十三時から深夜の三時。昼夜が完全に逆転したこのリズムでは、如何なる完璧超人の健康体であっても体調を崩すであろう。献立を考えるのが億劫で、調理をする気力もなく、食事への意識が欠けている。
その結果、目覚めている間も頭は茫洋としている時間が多かった。加えて、直近はエナジードリンクを毎日二本飲む生活を続けている。これは、自己の体調を気遣う気持ちを一片も感じぬ、自滅的なエネルギー摂取に他ならない。疲労困憊の状態は、この昼夜逆転のリズムと、「全てが面倒」で片付けられる気力の無さに要因がある。私は自ら、己の健康という土台を崩しているのだ。されど、この不健康な常道(ルーティン)こそが、今の私を辛うじて保つ防波堤になっているようにも感じてしまう。
だがそれも、あと暫くで終わりにせねばならぬ。あと四日後には学校がまた始まるのだ。しかし、この生活リズムが直ぐには戻らないことは承知している。どこまでも、無気力な九月であった。
迫る日の出
その四日という猶予は、私には絶望的な長さに感じられた。暦の上では、学校という社会の歯車に再接続するための準備期間。だが、体感としては、破綻の宣告までのカウントダウンでしかなかった。
一度、夜の三時に眠りにつく生活を習慣づけてしまうと、それを朝の七時に逆戻しするのは、まるで地球の自転を反対にするようなものだ。無理に早く寝ようと布団に入っても、瞼の裏でエナジードリンクの高揚感がまだチカチカと点滅している。時計の針が十時、十一時を指し、窓の外の静寂が深まっても、私の中ではまだ昼間の喧騒が続いているのだ。
結局、その四日間で私ができたことといえば、無駄な抵抗を繰り返すことだけだった。深夜一時に目覚ましをセットし、無理に起き上がって「朝」を偽装する。冷たい水を飲み、カーテンを開けて、闇夜に向かって「おはよう」と呟く。そして、空腹と吐き気に耐えながら、午前四時のコンビニで、学校で使うための新しいノートを一冊だけ買う。昼間の世界に間に合わないことは、既に決定事項だった。この夜行性の儀式を終わらせるのではなく、社会の側をこちらに引きずり込もうとしている。無気力な九月の終わり。私は、四日後の最初の授業で居眠りする自分を、既にありありと想像していた。
どこまでも身勝手なセカイ
その四日後、強制的に世界が私を迎えに来た。目覚まし時計を朝の六時にセットしたが、当然、それは身体のリズムを無視した暴力的な警告音でしかなかった。エナジードリンクの高揚感は前夜に使い果たされ、残っているのは心臓の不規則なリズムと、鉛のように重い全身の疲労だけだ。無理やり身体を起こし、カーテンを開ける。窓の外には、健康的な世界の象徴たる日の出が、容赦なく光を放っていた。 それは美しさとは程遠い、ただただ眩しく、敵意に満ちた光だった。夜の世界で生きてきた私にとって、朝の光は皮膚を焼くように感じられ、吐き気を催す。洗面台に映った自分の顔は、青白い肌に昨日までの疲労の痕を深く刻んでいた。十時間の睡眠も、この生活リズムの前では何の役にも立たない。ただの時間の消費でしかなかったのだ。夜に買った新しいノートをカバンに押し込む。体が重い。頭はぼーっとしている。今日、私はこの昼夜逆転した体を背負い、健全な生徒たちが集う学校という戦場に向かわねばならない。私が向かうのは日の出の光の中だ。しかし、私の内側はまだ深夜三時の暗闇に取り残されたままだった。



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