始まった生命《プロローグ》
- SAPO(部門責任者)
- 2024年11月7日
- 読了時間: 4分

・初めまして名もなき子です。(第一節)
今日は何の日だろうか。風が心地よく吹き、青空が覗くような日だろうか。
そんな日に私は、野原に草木が生い茂る所に私が存在する。なぜこんな所にいるのだろうか。
これは、今日の朝の事だった。
母という名の怪物と父という悪魔によって私は、この平原に捨てられたのだ。
私は、何か悪いことをしたのだろうか。いや、この二人の間に生まれてきてしまった自分のせいである。でも、これは運命なのかもしれない。
ここまでの人生はたった数年であったが、悔いがあるかと聞かれるとそんなことに気を回す暇もなかったな。
さて、ここからどうしようか。
まず、ここは心地の良い平原である以外に知っている情報がない。
とりあえず、何か食べ物とか探そうか。てか、この状況どうにかしてないかな。
子供を置いていってあの二人はどうなるのだろうか。
こういう時は、動かないと始まらないよね。
とりあえず、まっすぐ進んでみようか。
そうして、僕は野原を直進した。
・第二節
駆けだした私であったが、すぐにまず出会ったのは、みすぼらしい格好をした老人であった。その老人は私を見るや否やこう言った。
老人『おやおや、あなたは旅の者ですかな?』
主人公『いや、まずここがどこかも分からないので、遭難している人が近いです。』
老人『なんとまあ、大変そうですな。それで、今日寝る場所のあてとかあります?』
主人公『無いですね。色々と出来事が急だったもので。』
老人『では、私の家に今日は止まりませんか?あまりいい場所ではないと思いますが。』
主人公『野宿よりはいいと思うのでお願いします。』
そう私と老人言い交し、今日の私の宿は決まったのであった。
・第三節
一時間程歩くと、小川の辺に小屋が現れた。
老人『やっと着いたわい。最近足が悪くてのう。昔はこの距離を半分の時間で歩けたというのに』と老人が呟く。
主人公『まあ、年齢にしては元気だと思いますが。』
老人『そうかいそうかい。ところで、お主にはわしが何歳に見えておるのだ?』
主人公『八十歳ほどかと。』
老人『実は七十二歳なのじゃが。』
主人公『お若いですね。』
老人『老けていると言いたいのかね?』
主人公『そっ、そんなことは…』
老人『立ち話もなんじゃし、もうそろそろ家に入るかのう。』
そう言って老人は小屋の中へ入っていった。その様子を見送ったのち、私も小屋へのそのそと入っていった。
・第四節
おじいちゃんの小屋に入ると、そこにはガタついた食卓机にカサついた食パンと花のない花瓶があった。
老人(男性)『今日は冷えるらしいからのう。』
と老人は言い、鍋に水を入れ、火をかけだした。
何を今から作るのかなと思いながら立ち尽くしていると、
老人(男性)『なんで立っておるのじゃ、早くそこの椅子に座って待っておりなさい。』
主人公『はい。』
元より人との関わりが少ない分、こういう時どうしたらいいのか分からない。なんにでも許可が無ければ、動いていいのか不安だ。
そう思いながら、椅子へ座ると軋む音が聞こえた。いつからこの椅子は使われているのだろうか。物を大事にしているのか、新しくするお金が無いのか、少し失礼な事を考えていた時、ガラスの割れる音が聞こえた。
主人公『!?』
ふと音のなった方を見ると、おじいさんが瓶を落として割ってしまったようだ。
老人(男性)『おっと、やってしまったわい。どうするかのう。今日の夕食が作れなくなってしまったのう。』
主人公『今日はこのまま寝るのもありではありますね。』
老人(男性)『お主は優しいのう。ところで、お主の名前は何というのだ?』
主人公『名前なんて大層なもの私にはありません。好きなように呼んで下さい。』
老人(男性)『うーん、好きなように呼んでくれとな。難しいのう。じゃあ、冬の野原でお主にあったから、冬来(ふゆき)とでも呼ぼうかのう。』
冬来『何でもいいのでそれで。』
老人(男性)『それで、これから冬来は何をするつもりなのじゃ?あんな何もない辺鄙な平原で黄昏て何をするつもりだったのじゃ?』
冬来『それが・・・』
(ここで、今までの経緯を老人に話す。)
老人(男性)『冬来は強いのう。そんなことがあったのに、諦めずに生きようと思うとは。』
冬来『いや、もう諦めていたに近かったので。』
老人(男性)『まあとりあえず、ここから先のことが何も決まってないという事ならば、少しの間わしと過ごしてみないかね。』
冬来『えーと、そんなおじいさんに悪いですよ。』と言ってみたが、おじいさんの目はずっとこちらを向いていて、僕を逃すつもりはないようだった。
冬来『ふぅ、分かりました。仕事が決まるまでここにいたいと思います。』
老人(男性)『そう言ってくれると思ってたわい。と言っても祝えるような環境ではないのじゃがな。』と大きな笑い声とともに、すぎる時間はとても早く。僕の人生の一日目はすぐに幕を閉じるのであった。
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